リーマスがよく空を見上げていることには、随分前から気付いていた。
けれど、空が好きだから見上げているのではないと知ったのはつい最近だ。
5年間同じ寮で生活してそれなりの仲だったのに、気付いたのが最近だなんて少し情けないけど。
にもばれちゃったか、と彼は苦しい笑顔で笑っていた。
ちなみにジェームズ達はとっくの昔に気付いていたらしい。悔しい。
夜風がふわり、とリーマスと私の髪を揺らした。風の温度が優しい。もう春だ。
じゃり、と靴底が地面を擦っていく音が二人分。
わたしとリーマスを寮を抜け出して夜の散歩だ。本当に歩くだけ。会話はほとんど無い。
リーマスは私の一歩前で、月を見上げながら歩いている。細い三日月を。
背中しか見えない彼は何を思ってこの月を見上げているのだろう。そう考えるとたまらなくなって、
ぽすりとリーマスの背中に身体を預けた。そのまま彼の身体に腕を回して抱きつく。
「・・・、」
立ち止まってリーマスが振り返る気配がしたけれど、私は黙って彼の背中に顔を押し付けた。
多分泣きそうな顔をしているだろうから。こんな顔は彼には見せられない。
私が少しでも彼の痛みを引き受けることが出来たらいいのにと思う私は、傲慢なのだろうか。
月光が私達をゆるやかに照らす。今はこんなに頼りない光なのに、あと半月ほどもすればこの人を呑み込んでしまうのだ。
涙を押し込めてゆっくりと顔を上げたら、リーマスは笑っていた。痛みを堪えているような顔で。
私に出来ることなんて何もない。
そして目の前のこの人はいつも全てを隠そうとするのだ。
Alexandrite